Once in a Blue Moon

ずっとひとりの人しか男は知らなかった。そんな人生に一瞬心の奥底まで入り込んできた人。全ては貴重で大事な経験。

夏が嫌い

雨が好き。

曇るなら、むしろ降ってほしい。

ギンギラギンの太陽の熱を浴びるよく晴れた日の方がどっちかっていうと苦手。

だから梅雨の時期が終わってからのこれから夏本番だっていうこの時期が、一年の中で一番苦手だ。

 

雨が降ってくれると落ち着く。

雨の音や匂い、ちなみに雷も好き。

災害級になると話は別。

雨が好きなのには小さい頃からの思い出が関係していて、大体嬉しいことや楽しいことがあった日には雨が降ってた。

飛び上がるほど喜んだ、嬉しいことがあった日には、ドッカーンと雷が落ちたりした。

このときからきっと雨女だったに違いない。

 

そして、雨がたくさん降って、その時期が終わって、晴れが続く... 暑い暑い夏の始まり。

これが本当に苦手だ。憂鬱。

一年前のこの時期も本当に憂鬱で、雨が降っている間に苦しいことは全部洗い流してくれたらいいのにと思っていた。

(前の彼とお別れしたのもこの時期だった。梅雨の間、彼と密会を重ねてたときはいつも雨が降ってた)

 

だけど、時間が解決してくれるというのは本当だった。

当時そんなことを言われてももちろんピンと来ないし、苦しみの終わりがいつになるかなんてわからない、時間が解決といっても、それがあとどのくらいだなんてわかりっこない。

 

“全然大丈夫じゃない「大丈夫」を繰り返しながら、つらい今日は日々遠ざかる”──ドラマ『ギルティ』より

 

生きていれば、何もしなくてもとりあえずは一日一日過ぎていくもの。

雨が降っても降らなくても。洗い流してくれなくても。

 

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ワレモコウ。“移りゆく日々”

 

この夏は、また昨年とは違った夏になる。

コロナもそうだし、自分の生活環境もガラリと変わった。

 

新しい出会いをして、自分という存在を認めてくれる人に出会った。

出会いがあれば、いつかは別れが来るものだ。

それぞれの場所で、それぞれが生きていく。

 

そして今年の夏も梅雨が明けて一気に暑くなり、また苦しい日々がやってきた。

それでも夏には必ず終わりがあるし、涼しい秋がやってくる。

 

みんな、同じ季節を生きている。

人それぞれきっと苦しいことはあるし、それでもみんな生きている。

ひとりじゃないはず。

 

秋を待ち遠しく思って、ハマさんのことを想って、なんとかまたこの夏を乗り越えたい──

痕跡

8月に入った。

長めの梅雨が明けて、よく晴れた日の朝。

それは突然だった。

 

ハマさんからのメール。

嬉しくて、ウキウキな気分で開く。

 

.......その一文を見て、一瞬にしてどん底に突き落とされた。

 

バレた、何があってもしばらく返事しないで

 

これを受け入れるまでにかなりの時間を要した。

 

“終わり”という単語が脳内を埋め尽くす。

結局、こういうことだ。結局は離れていってしまう。

心を許し、好きになって、生きる活力になっていた。そんな存在は、結局は呆気なく消え去る。

 

やっぱり不倫なんて苦しいだけだ。

楽しいのは一瞬だ。

好きな人がいればなんか頑張れる──ハマさんの言葉が蘇る。

 

ハマさん、今頃生きてるかな…

奥さんに殺されたかな...

大丈夫かな...

 

ハマさんのことが好き。

“俺は前の彼みたいに途中でさよならしないしずっと一緒にいれると思う”

“終わりにするときはちゃんと伝える。でも絶対に俺からはないから”

“子どもができたりとか会えない状況が多くなっても、それでも会えるときがあれば会いたいと思ってる”

言ってくれた数々の言葉を思い出して、夫にバレないようにトイレにこもって泣いた。

 

不倫の傷を不倫で埋めるなんて無理な話だ。

ただ傷を抉るだけだった。

それでも、わたしはもうきっと抜け出せない。

夫以外の誰かの存在が、自分の生きる活力になることに気づいてしまった。

ハマさんの言った通り。

でももう、ハマさんからは連絡も何も無いのだろうか。

 

ハマさんは前の彼とは違う。平気な顔して突き放したりしない。

そりゃあ不倫相手より奥さんを選ぶことはわかっている。元々割り切りの関係だ。

それでもちゃんと別れの言葉は言ってくれるはず。

何も言わないで終わりにすることは絶対にしないと彼は言った。

 

あれ、何を期待してるんだろう。

不倫を始めた時点でこうなる時が来るってわかってたはずなのに。

 

不倫の鉄則は、バレたらおしまい。

その代償は大きい。

それでも──もうどうにもなりませんか。

 

一年に一回だけでもダメですか。

 

前の彼との失恋、退職、流産のショックから、わたしを救って陽のあたる場所に戻してくれたのはハマさんだった。

ハマさんの存在は、わたしにとっては本当に生きる活力になっていた。

感謝している。最後にありがとうって言いたい。その機会だけでも、神様、与えてくれませんか──。

 

ハマさんはわたしの元から去っていく。

そしてまたわたしは暗闇のトンネルへと戻るのか?

 

ハマさんが好きだと言ってた、WANIMA。

いつか聴いてみてって言ってたな。

 

“あの、いつも元気な人たちでしょ?”

“そうそう、いつも笑ってる人たちね”

 

WANIMA『trace』

──痕跡。

誰にも認められなくても

あなたがくれた あの言葉が

いつだって背中を押して

なんとかここまでたどり着けた

そばにいる気がした

いつまでも見上げた空

また逢えるように.....

 


WANIMA -TRACE (OFFICIAL VIDEO)

 

とある公園のベンチ。

夜8時過ぎ。

空には、満月に近い月が顔を見せたり雲に隠れたり。

スケボーしてる人たちの声や、バスケをしてる人のバウンドするボールの音。

 

この空の下に、みんないる。

彼も、ハマさんも、みんな。

逢えないだけ。

 

ハマさんが心配。

無事かな... 大丈夫かな...

わたしにできることは何も無い。

ただ、待つだけだ。

 

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紫色のヒヤシンス。“悲しみを超えた愛”

別れはいつも突然

この日も、いつもの公園で、1時間くらいの逢瀬。

 

──まさかこれが最後になるなんて...

 

***

 

夜7時過ぎ。

公園の駐車場でハマさんを待つ。

雨上がり、降ってはないけど地面が濡れている。

ハマさんを待っている間、赤いスポーツカーが止まって、中からおじさんが出てくるとでかい声で電話をしていた。

 

しばらくしてハマさんのグレーの車が入ってくるのが見えた。

助手席に乗り込む。

「変なおじさんがいるの」

「そうだね、ドライブしようか」

 

田舎の山道を、いつものようにあてもなくドライブ。

 

「実はね、最近家が完成したんだ」

「家建てたの?すごいね」

「うん、今はアパートに住んでるけどね。そこから100メートルくらいの場所なんだけど。一軒家建てたいとかっていうのはある?」

「ん〜... 特に家建てたいとかは思わないかも」

「なにか夫婦の目標とかはある?将来の」

「目標?ん〜とりあえず、今を生きていければ.....それでいいかな」

わたしがそう言うと、ハマさんは笑った。

 

「そっかあ。じゃあ、きっと子どもも時間の問題かな」

「うーん、奥さんを抱きたいって思えないんだ」

「妊活は...してるの?奥さんは何かしてる?」

「奥さんは毎日体温測ったりしてるかな」

「それで、排卵日とか言ってくる?」

「うん、言ってくるけど、疲れたって言って流してる」

 

ハマさんは、前に忘れられない人はいるかとわたしが聞いたとき、いないと言っていた。死ぬほどの恋をしたことがあるかと聞いたら、無い、と。

すぐ人を好きになるけど、忘れられないほど引きずったことは無いとのこと。

奥さんと結婚したときは、ハマさんよりも奥さんが結婚したいとずっと言っていたそうで、ハマさんは実のところはまだ結婚したくなかったらしい。

それでも、自分の変態なところとか全てを受け止めてくれるのは奥さんだなと思ったんだそう。

 

夫婦のかたちは人それぞれ。

それを他人がとやかく言う資格は無い。

 

この秘密の関係が、お互いのパートナーに対しての不満だったり愚痴を言い合ったりするのはあるけれど、絶対にそれぞれの夫婦の仲を壊そうとは思わないし、踏み込むことも無い。

 

だから、奥さんが子どもが欲しくて、周囲がどんどん子どもを産んでて焦りがあるっていう話をハマさんから聞いても、わたしがハマさんに何か言う資格は無いし、言いたくもない。

でも心の中では、家を建て、夫婦二人でそこに住み始め、いずれはきっと子どもができるのだろうと思う。

そうしたら、わたしの存在はハマさんの中で少しずつ小さいものになり、もちろん会える回数も減り.....

でもそれでいい。

この関係に終着点は無いのだから、それでもいいのだ──だから、

“この先 会えなくなることあるかもしれないし、だから会えるときに会っておきたい”

わたしのその言葉に、ハマさんは寂しそうな顔をしていた。

 

車が公園の駐車場に戻ってきたときには、例のおじさんは既にいなくなっていた。

イムリミットは迫ってきているけれど、あと少しだけ、車から降りて公園を散歩した。

 

芝生は濡れてて、夜空は曇っている。

ブランコに座って揺れながらおしゃべりしたり、芝生にしゃがんで見つめ合ったり、このなんでもない時間が幸せだった。

いつか無くなってしまうであろうこの時間が。

 

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ペチュニア。“君といると心なごむ”

 

未だにまだ重なる瞬間がある。前の彼と。

夜二人で外を歩いているとき、なかなかわたしに触れてこないところとか。

 

「前の彼とは、どんな話をしてたの?同僚だったんだよね、仕事の話とか?」

 

ハマさんはわたしの心の傷である前の彼とのことをたまに聞いてくる。

初対面のときに少し話をして、その後はあえて話さないようにしていた。

彼じゃなくてハマさんを見たいから。

 

「わたしが前の彼の話をするの、嫌じゃない?」

「うん、話したいでしょ」

 

聞き上手なところが似ている。

優しいところも似ている。

 

いよいよタイムリミットが近づいてきて、わたしからハマさんに抱きついた。

優しく抱きしめ返してくれる。

そしてわたしの両頬をあの大好きな手で包み込むと、温かいキス。

 

別れ際はいつも寂しい。

こういう関係だから尚更。

次はいつ会えるのか、約束していても会える保証は無いから。

 

「帰らなきゃ。じゃあね」

ハマさんはわたしの顎をひょいひょいっと触ると、車の方に行った。

「バイバイ」

 

ハマさんが行ってしまうまで見送った。

一瞬また、ハマさんのグレーの車が走り去るところと、彼のSUVの車が走り去るところが重なって見える。

 

ダメダメ。前のようにのめり込まないようにしなきゃ。

 

***

 

ハマさんに会えたのは、触れられたのは、これが最後だった。

だけど、前の彼との結末と、ハマさんとの結末は違った。

続きがある。

きっとあるはず──。

女でよかったと思う瞬間

女に生まれてきてよかった、わたしはあんまりそう思えない。

密かに男の方がよかったなと思っている。

 

理由はいろいろある。

 

幼い頃、テレビで出産に関するドキュメンタリーや、子どもか母親かどちらかの生命を選ばなければいけないことになるドラマのシーンなどを観ては、自分が将来大人になったらこんな思いまでして子どもを産みたくないって子どもながらに思っていて、それは恐怖に近い感情だった。

自分の母親に、子どもを産むのが怖い、あんなに痛い思いをしたくない、などと本気で泣きついたことがあるくらいだ。

小学校低学年くらいだろうか。

その頃は本気で、自分が女であるからには大人になったら死ぬ気で子どもを産まなければならない運命だということの、かなりの恐怖に怯えていた。

母はそんなわたしを抱きしめて、ただただ大丈夫だと慰めてくれた。

そんな母は、わたしの姉と妹を死産で亡くしている。兄も、聞いた話によるとなかなか出てこなくて、帝王切開になる直前だったとのこと。

ちなみになんの問題もなく廊下で産まれそうになったのはこのわたしだ。

二人も亡くしている母は、わたしが双子ちゃんを流産したときにかなりの心の支えになってくれた。

もちろん、母だけじゃない、夫や親友や父、ハマさんも。

それでも母には敵わない。母親って強い、本当にそう感じる。

わたしはまだ初期の流産だったけれど、母の場合はお腹が既に大きくなってきて胎動も感じられるときに、お腹の中で亡くなってしまったとのこと。どれだけ悲しかったか計り知れない。

それでもちゃんと乗り越えられるから、と流産したときに母は言ってくれた。

母親は偉大だ。

わたしは母のようになれる自信は全くない。

 

他の理由としては、ちょっとめんどくさい女社会がやはり苦手だったり、その中であまり友だちを作るのが上手ではなかったので、そういう理由もある。

だから、男に生まれてきた方がよかったな、なんてたまに思うのだ。

 

もし男だったら嫌だな、と思うことは昔の兵役だ。

お国のために命を差し出す。

女は愛する人を、帰ってこない夫をただただ待つだけ。

男は妻を置いて、戦いに逝かなきゃならない。

そんなのは嫌だ。

 

というところまで真面目に考えることがたまにあるけれど、結局は、苦しくて痛いのが嫌なんだと思う。

なんて弱い人間...笑

 

と言いながらも女であることを楽しんでもいる。

お洒落は好きだし、センスがあるかはわからないけど洋服もメイクも好き。

男の人に褒めて貰えたらそれはすごく嬉しい。

 

そして最近、女でよかったと思う瞬間があった。

それは、女は男に守られる存在だということ。

ただ女はいつも泣き寝入りだとか、だからこそ傷つくことも多いけど...

今の時代は女も強くなってきたから、それでも少し残っている男尊女卑という概念ではなくて、ただ男の人に守られ、女は男を支え、寄り添い合うのが理想だ。

レディーファーストという言葉の意味が昔から変わってきているように、男性にエスコートしてもらえるとそれって悪い気はしなくてむしろ嬉しい。

 

出会い系サイトを通して数人の男性と関わって、特にそう感じた。

例えば、当たり前だと言われることもあるかもしれないけれど、男性が運転する車に乗せてくれること、初デートでは支払いも男性がしてくれること、贈り物を用意してくれていること。

わたしを女として扱ってくれることがすごく嬉しかった。

いろんな人がいるけれど、その中でもわたしにとってはハマさんは格別だった。

 

実は他の男性とは、ドライブだけではなくお茶したり食事したり夜景を見に行ったりした。

エスコートしてくれるし贈り物をくれたりもした。

でもハマさんとは30分から1時間くらいの間だけ、ドライブや散歩しておしゃべりするのみ。

それなのに、どれだけ他の男性に優しくしてもらっても、ハマさんがよかった。

ハマさんでなければダメだった。

その理由は一言では表せないし、うまく言えない。

 

段々と、この記事に終着点がないことに気づき始めた。

オチがなくてごめんなさい...

 

***

 

※余談

もし生まれ変わったら、次は男として生まれてきてみたい。

女である今の自分には無いもの、誰か一人の女性を守れる、強い男性になってみたい。

イメージは、V6の岡田さん。

SPっていうドラマがすごく好きだった。

そしてこのご夫婦に勝手に憧れを抱いている。

 

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美男美女、あぁ、目の保養...

もう後戻りできない

前回↓daisymargaret.hatenablog.com

 

ラブホテル。

 

ハマさんがワインをプレゼントしてくれた。

ハマさんは運転をするから飲めないけれど、わたしは俺が送り迎えするから飲んでいいよと言ってくれた。

いくらしたのか教えてくれなかったけれど、凄く美味しい白ワインだった。

 

そして、二人である大河ドラマのDVDを観た。

ラブホで大河ドラマを観る人っている?

でも歴史好きが一緒で、今度一緒に観たいねと言ってたことをハマさんは覚えてて、DVDを持ってきてくれた。

 

ワイン飲みながら、チーズつまみながら、ドラマ観ながら、いろんな話をした。

 

「この時代は一夫多妻?」

「うん、女性は相手を選べない。親に決められた家に嫁ぐんだよ」

「それで側室だったら、ずっと待ってるんだよね、しんどいなあ」

「人質とかもあったしね」

「でもこういう戦国時代だから、なんていうかロマンがあるんだよね」

「うん、わかる──」

 

「不倫て切ないじゃん。相手が病気とか怪我とかしても、それを知ることができない」

「うん、死んじゃってもね」

「なのになんでハマさんは、不倫したいと思ったの?」

「他に好きな人がいればさ、なんか頑張れるじゃん」

 

ハマさんの肩にもたれかかった。

 

「シャワー... 浴びてくる?」

「あ、えっと...」

「やめとく?無理しないで」

 

俯くわたしの顔を覗き込み、ハマさんは優しく語りかける。

 

「いいよ、また今度でも。ねえ、泣かないで」

「...大丈夫」

 

ハマさんの顔を見て、伝えた。

ハマさんに、抱かれたい。

 

「わたし、あまり綺麗じゃない。お腹も弛んでるし」

「大丈夫、おいで」

 

シャワーを浴びて、ベッドに並んで座った。

 

ハマさんに抱きしめられて、顔が近づいてくる。

実はこのときが初めてのキス。

一瞬でハマさんに吸い込まれた。

 

「...煙草臭い?」

「ううん」

 

そのままベッドに押し倒されて、キスをしながら胸を揉まれる。

甘噛みされて、下の方も弄られて──。

 

***

 

ハマさんとの一部始終、夫とも彼とも違う、なんだろう、この満たされる感じ。

ハマさんは終始わたしを気遣って、優しく声をかけながら、果てた後にはきつく抱き合った。

幸せだった。快感も。

 

帰りの車の中、手を握った。

あの、わたしの心を穏やかにしてくれる手。

仕事柄カサカサになってしまうけど、その毎日頑張っている証拠である手。

彼とも夫とも違う、大好きな手。

 

「...やっちゃったね。もう、後戻りできないね」

「ん... 責任取ってね」

「もちろん」

 

程よく酔った気持ちいい気分のまま、ハマさんの声を聴いていた。

彼はもうそこにいなかった。

ハマさんが好きだ。

そして、ハマさんと一緒にいる自分が好き。

 

ハマさんは、わたしが昔やってたスポーツをまたやったらと言った。もったいないよって。

仕事のことも、あと資格試験を受けようと思ってることも話すと、すごく背中を押してくれた。

ハマさんのお陰で、いろいろまた頑張ってみようって思えた。

もちろん夫のお陰でもあるけれど、今の自分を地に足がつくようにしてくれたのは紛れもなくハマさんの存在があったからだ。

 

別れ際、どちらからともなく抱き合ってキスをした。

「本当に家まで送らなくていいの?」

「うん、覚まさないとね」

 

ハマさんがくれたワインを瓶の半分ほど飲んだわたしは心地よく酔って、気持ちいい気分のまま夜道を歩いた。

翌日もハマさんの仕事終わりにいつもの公園で会う約束をした。

 

この関係にきっと永遠なんて無いのだろう。

だけど、それでももう一度信じてみてはダメかな。

ハマさんの言葉を、信じたい。

 

──絶対に俺から終わりにすることはしないから...

 

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エリンジウム。“秘密の恋”

 

家に着いて、ハマさんがくれたワインをクローゼットのスーツケースの裏に隠した。

一人の夜に、こっそり飲もうと思う。

 

好きな人から貰ったものは捨てられない。

でも、この秘密の関係は墓場まで持っていかなきゃならない。

証拠は残しておけない。

だからそのワインを記憶の中に刻み込んで、空になった瓶はコンビニに捨てた──。

直感と、救いの手

これまで25年生きてきて、実際に付き合って関係を持った人は本当に少ないけれど、片想いはたくさんしたし告白されたこともある。

好きになった歴代の男性に対して感じた感覚はそれぞれ違うけど、共通するのはやっぱりフィーリングかな。ときめき、というか直感も大事。

 

夫と付き合っていた頃、だいぶ初期に「あぁ、わたしこの人と結婚するんだ、他の人じゃだめだ、この人しかいない」とただ漠然と感じていた。

自分をさらけ出せて、全てを受け入れてくれる。

お互いの苦手な部分を、お互いで補い合うことができる。

フィーリングが合うし、一緒に居て違和感が無い、いないと逆に調子が狂う。

だからまさしくソウルメイト。↓

 

前の彼に対しては、身体の中を稲妻が走ったかのような衝撃だった。あれは本当に“恋に落ちた”っていう言葉がぴったりくる。

ドキドキが収まりきらず、彼のことで頭の中が埋め尽くされ、まるで病に侵されたかのよう。

幻想的なお月様の影響もあったのかも。

死ぬほどの恋、燃えるような恋、身を焦がす愛...とはまさにあの頃彼に抱いていた感覚だったと今になってわかる。

期間限定で、結ばれない運命だとわかっているから余計に。

ただそれは、だからこそ一時的なものにすぎないのかもしれない。↓

 

──そして今。

 

***

 

この日、ハマさんとまた彼の仕事終わりに会う約束をした。

何度目かの逢瀬。

夜、近所の公園で、この日は時間が無くて30分程度。

 

ハマさんのこと↓

 

雨が降ってた。

ハマさんの車に乗り込んでドライブしながらおしゃべり。

そのうちに、「手、触っていいですか?」と言われて右手を差し出した。

ハマさんは、メールではいつもS気質を出していじってくるのに、会ってるときは紳士でたまに敬語だったり、これまで指一本触れてこなかった。

だけどこの日は何かアクションがあるんじゃないかと思っていた。お互いに好意があるって気づき始めてたから。

 

わたしの手を握るハマさんの手は肉厚で温かい。

なんだろう、このハマさんの手が、すごく落ち着く。

わたしを暗闇から救った、魔法の手だ。

 

「指太いの、突き指し過ぎて太くなったってことにしてる」

コンプレックスの一つである自分の手のことを言うと、ハマさんはそのわたしの手をマッサージしてくれた。

 

わたしは昔から手のマッサージをしてくれる人が好きだ。

女性の手は指が細くて長くて、爪の形も整ってて、ネイルをするとすごくお洒落で綺麗な手になる、そんな人に憧れてたけど、わたしはどう頑張ったって無理だった。

浮腫んでて指は太いし爪は小さい、ネイルはできるけどそんなに綺麗に見えない。指輪のサイズも言いたくない。

昔からやってた球技のせいってことにしてるけど、数多くあるコンプレックスの一つ。

そんな手を見て微笑みながら優しくマッサージしてくれる人はそんなにいないのに、ハマさんは自然な流れでわたしの手を揉み始めた。

 

初めて触れた。

そのときに感じたのは、心地良さ。安心感。

 

前の彼に似ている部分はあるけれど、前の彼のような甘い匂いはしないし、引き締まった身体でもなく、吸い込まれてしまいそうな魅力が凄くあるわけでもない。

でもなんだろう、明らかに違うのは、自分の心が落ち着いていること。初めて触れ合ったのに違和感を感じなかった。

 

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アザミ。“安心”

 

その後ハマさんは、自身の手をわたしの頭の方に持ってきて、頭を撫でたり髪を触ったり、耳たぶを触れて付けていたピアスを弄る。

...ドキドキする。

そのハマさんの仕草が、なんだか凄く、エロい。

この人は女性を抱くのが上手かも──対して経験が無いのに、そんなことをふと思った。

 

身を任せてもいいと思った。

これからの人生を生きていくために、ハマさんはわたしにとって必要な存在なのかもしれない。

 

「今度、ホテル行こうか。嫌だったら無理しなくて大丈夫だから」

「嫌じゃ、ない.....緊張する」

「緊張させちゃって、ごめんね」

 

帰らなければならない時間になって、最後にハマさんは、おいで、と両手を広げた。

その胸に顔をうずめて、抱き合った。

 

身体の中を稲妻は走らない。だけどまた違う、ドキドキ。

ハマさんが好きだ。

彼の面影を重ねているわけではない。

始めは自暴自棄になって、彼をハマさんに重ねて、利用して、傷を埋めようとしてた、そんな気持ちも実際に無くは無かった。

でも今ハマさんと抱き合って、この心地良さはきっと他の場所では感じられない、この空間がたまらなく好きだと思った。

だから、身を委ねよう...って。

 

実は、初対面のときに少し感じてた。

あ、この人だ。って。

直感は、何気に当たる。 

 

***

 

恋は楽しい。

苦しくて切なくて、儚い恋もあるけど、それでもやめられない。

きっといつだって、どんなときだって、恋はしてもいいんだ──。

 

 

夫はソウルメイト

前回の記事↓

daisymargaret.hatenablog.com

 

夫と一泊温泉旅行。

お洒落な夕食、夜の温泉街をぶらぶらしながらまた一杯飲み、お部屋に戻ってきてまたワインを飲む。

程よく酔って、気持ちよくなって楽しくなって、そのまま夫とベッドイン。

 

夫はソウルメイトだ。

今は、友だちでもなく恋人でもなく、夫婦だけどそれっぽくもなく...

ソウルメイトって言葉が一番合う気がする。

 

この世の中で唯一、自分という存在を認めてくれてさらけ出せる人。

だから離れたくても離れられない。

その人がいなければ生きていけない。

もはや自分の中の一部で、その人の存在があってこそ自分という人間が成り立つ。

魂で繋がってる。

こんなことを本人に言ったら笑われてしまうけど、わたしは真剣にそう思っている。

 

恋とかじゃない。

もう次元が違うって感じか。

 

だから、同僚の彼に恋に落ちてしまったときも、夫を手放すことができなかった。

既に婚約していて、結婚の準備が着々と進んでいて後戻りできなかった、ってのもあるけれど。

このことをハマさんは、欲張りだな〜と笑う。

言い訳に聞こえても仕方ないけれど、自分にとっては本当に別物で。

夫は別格というか、その存在に代わる人は誰一人としていない。

彼に対しては、本気で恋に落ちて好きで好きで仕方のなかった、あれも本気。

理解されないのは充分承知している。二股と捉えられても、それも間違ってない。

でも自分の心はそんな簡単には説明できなくて。

夫は、その存在が無ければ生きていくことが難しい。彼は、いなくても生きていける、あった方がいいけれど、無くてもなんとかなる。──そんな感じだ。

 

血の繋がりの無い他人だった人と、ソウルメイトと呼べるまでの間柄になれる存在って、そうそう無いと思う。

切りたくても切れない。大切な人。

夫ではない他の人と恋をしたり、体の関係を持ったりしても、夫が大切な人であることに変わりはない。

それだけはずっと変わらない。

 

たまにぶつかるときもある。喧嘩もする。

だけど絶対しないのは別れ話。付き合ったときから一度もしたことは無い。わたしが話そうとしたときはあったけれど、夫は絶対に別れるとは言わなかった。

 

ただ一つだけ──

夫はやっぱり子どもが欲しくて、わたしの体がリセットできたらまた妊活を始めたいと言った。

わたしは正直なところ、しばらくのらりくらりしたかった。双子ちゃんは、どちらかでも必ず戻ってきてくれると思ってる。でも今じゃない。

それだけじゃなくて、妊娠してわかった自分の身体にかかる負担... 悪阻も重かったし、普通の体では無いということが、流産してダメだったからってまたすぐ次に取り掛かれるほどの簡単な話ではない。不妊で苦しんでる方々には本当に申し訳ないことを言っていると思う。

それでもやっぱり再び妊活に取り組むことは、今はできない。

このことだけは正直に伝えることができなかった。夫が子どもを大好きなことを知ってるから。↓

daisymargaret.hatenablog.com

 

わたしが未だに双子ちゃんのことを引きずっていると夫は思っている。

それは、夫の親戚の集まりが年2回お盆とお正月にあるのだけれど、小さい子たちが多かったり義理のお姉さんがお腹が大きかったりするので、直視できないと思ったからとりあえずこのお盆の集まりは欠席したいと夫に言った。

知らない人の赤ちゃんや妊婦さんは大丈夫なのだけど、友だちだったりましてや親戚だと、無視できない。どうしたって双子ちゃんのことは考えて、辛さを思い出す。

引きずっている訳では無いけれど、とりあえずこのお盆の集まりだけは... しんどくなるとわかっている場所に行くほどの精神力が今のわたしには...

そうお願いすると、夫はあまり良い顔はしない。“いつ大丈夫になるの?”そんなことを言われたこともあった。

とりあえず最悪は夫が一人で行くとのこと。

なんだかんだ言っても、結局はわたしの意見を聞いてくれる。そういう人だ。優しい人なのだ。

 

夫は大好きだし、ずっと一緒にいたい人。でもだからこそ、一番近い人だからこそ、言えないことだってあるし、もちろん秘密も。

とりあえず今はのらりくらり、お酒飲んだり、目的の無い愛し合うためだけのセックスをしたい。

 

そしてこの旅行は、目的を一旦無くして忙しくもなくのんびりとただ今を楽しむだけの旅行。だからか本当にすこぶる仲がよくて、家に帰りたくなかった。

子どもの頃に感じていた旅行の最終日の寂しい気持ち。現実に戻るときの、気持ち。

 

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「あなたは落ちてるときは本当に大変だから、笑ってて」

夫はふざけてよくそう言う。

夫が大好きだ。

何度も迷惑をかけた。感謝してもしきれない。

夫がいなくなったらわたしはそれこそ生きていけない。

だから、わたしよりも長生きしてほしい。わたしが絶対に先に逝きたい... ここまできても自分勝手なわたし...笑

夫は、自分の人生でかけがえのない存在。

 

悪い妻でごめんなさい...